食料自給率の向上、地産地消の観点から伺います。
はじめに、鳥獣被害対策について伺います。野生鳥獣による農作物への被害の拡大は単に被害額が大きいということにとどまらず、収穫前に食い荒らされ、踏み荒らされることで農業者のやる気・生産意欲をなくして耕作をやめてしまう深刻な問題です。県はいままでも農家を守るため様々な被害対策を講じてきました。しかし、被害は全県的にも全国的にも見過ごせない状況であり、国は今年2月、鳥獣被害対策を総合的に進めるために、「鳥獣被害防止特措法」を施行しました。これに基づいて市町村の計画策定を進めていますが県内市町村の状況はどうかお伺いします。
被害防止施策については、この法律の施行後五年を目途として、この法律の施行の状況、鳥獣による農林水産業等に係る被害の発生状況等を勘案し、その全般に関して検討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直しが行われるものとする、とされており継続されるか不明です。長期的に取り組んでいけるよう、県として「鳥獣被害防止条例」を検討してはどうか、あわせて林務部長にお伺いします。
<轟林務部長>
はじめに、鳥獣被害防止特措法での市町村の計画策定の状況についてお尋ねでございます。11月末現在で、県内の57の市町村で、自ら被害防止のための計画を策定し、具体的な対策を進めているところでございます。この中で、17市町村のうち23の市町村で、国から市町村へ直接布告される事業であります鳥獣害防止総合対策事業を活用して、防護柵の整備や追い払い等を実施しております。また、18の市町村では、ニホンジカ等の捕獲権限が県知事から市町村に移譲されております。
次に、鳥獣被害防止条例を検討してはどうかというお尋ねでございます。現在、県といたしましては、野生鳥獣にたいしましては、鳥獣の保護及び、狩猟の適正化に関する法律、また先に申し上げました鳥獣被害防止特別措置法などに基づきまして、防除対策、生息環境対策等を総合的な被害対策を進めているところでございます。さらに、長野県独自の取り組みと致しまして、部局横断的な組織であります、野生鳥獣被害対策本部を設置致しました。それに基づきまして、野生鳥獣に負けない集落づくり、長野県の自然農林業をニホンジカから守るための捕獲の促進を基本目標とした被害対策の基本方針を作成し、鳥獣被害対策に取り組んでいるところでございます。
また、市町村における被害防除対策を進めるために、各地方事務所に農政課、林務課、農業改良普及センター等の関係各課により組織される「野生鳥獣被害対策チーム」を設置しまして、各市町村や被害集落の皆様と一緒に具体的な被害防除対策を進めているところでございます。このように既存の法令や指針に基づき、市町村と連携をとりながら総合的な鳥獣被害対策を取り組んでいることから、いまの野生鳥獣被害特措法の5年の延長に関わらず、取り組んでいるところでございますので、新たな条例を検討するようなことは考えておりません。
実効ある対策を進められているということですので、引き続きよろしくお願いします。
長野市では2003年から農地の遊休荒廃地化の防止、自給率の向上及び地産地消の推進を図るため、小麦・大豆・そばを市の奨励作物に指定し、その奨励作物を栽培し、出荷することに対して奨励金を交付する奨励制度を今年度まで5年間にわたって続けてきました。
この制度が始まった平成16年では小麦の作付けはわずか0.5ヘクタールでしたが、今年は20ヘクタールと、作付けは40倍にも拡大しています。グラフを見ても一目瞭然です。出荷量は小麦が152倍、大豆2倍、そば7倍と収量を上げています。そして、農協が中心に買入れ全量管理されており、大豆はJAながのから長野市給食センターに売り渡され、給食の食材として活用されています。給食センターの管理栄養士は「子どもに安心して出せる」と好評です。
しかし、長野市では予想以上にこの制度が活用され年々予算の増額が必要になり、昨年度から奨励金の単価引き下げました。しかし、引き続き作付けも収量も増え続けています。遊休荒廃地解消、自給率向上に実効ある施策です。
長野市が行っている「地域奨励作物支援事業奨励金制度」のような自治体の取り組みを県は把握されていると思いますが、このような市町村への支援をすべきと思いますが農政部長いかがですか。
<白石農政部長>
地域奨励作物支援を実施する自治体の取り組みの支援ということで、お尋ねを頂戴いたしました。長野市等が実施しております「奨励金制度」につきましては、農地の遊休化の防止や特産品の産地化に効果をあげていることは承知をしておりますけれども、県がこうした対策に財政支援を行うことは、大変厳しい財政状況の中では、難しいと考えておりますので、生産技術の指導あるいは特産品の加工指導などの支援を行ってまいりたいと考えております。
県と致しましては、先ほど小松議員からもご質問がございましたけれども、水田における「まちづくり交付金」も活用致しまして、各地域が定める転作作物の産地化を推進するとともに、国が新たに創設を予定しております「自給率向上のための水田等有効活用促進対策」などを活用致しまして、麦・大豆の作付けの推進を促進をしてまいります。
また遊休農地の解消につきましては、遊休農地活用総合対策事業などによります支援を行うか、「信州・田畑を耕そう連絡会」によります市町村、生産者関係団体等と連携した県民運動としての遊休農地解消運動を展開いたしまして、大豆・ソバ、地域特産作物の作付けを推進し、自給率の向上などに、つなげてまいりたいと考えております。
つぎに、リンゴの価格保障についてお聞きします。
今、りんごの主力「ふじ」の最盛期を迎えています。しかし、りんご農家の皆さんからは「資材価格が高騰しているのに、りんごの値が下がってこのままでは年が越せない」と切実な声を寄せられます。青森県産との競合や景気悪化による消費の落ち込みなどが重なり合って、市場の出荷価格は1キロ80円まで値を下げて、ただ同然、出荷するほど赤字になる事態です。
一方で、肥料・農薬・出荷資材など生産コストは昨年から相次いで値上がりしてダブルパンチです。自然災害は局所的なものですが、今年のりんご価格暴落は生産農家全体を直撃しています。1年間の苦労が報われない、売上から費用を引いたら生活費が残らない深刻な事態に対して、緊急に支援を講じて欲しいと思いますがいかがですか。
果樹王国長野県でありながら、果樹の価格暴落に備えて支える制度はありません。県として価格保障制度を検討すべきではないですか、農政部長にお聞きします。
<白石農政部長>
続きまして、リンゴ農家の支援にたいするお尋ねでございます。本県産のリンゴの状況につきましては、議員ご指摘の通り、景気後退等の影響から、市場価格の低迷がございます。また肥料費等の農業資材が高騰しておりまして、農家経営は極めて厳しい状況にあると認識しております。
当面の経営支援対策としては、国が緊急に創設いたしました、肥料費の増加分の7割を助成致します「肥料・燃油高騰対策緊急対策事業」の活用とともに、運転資金の融資要望にたいしましては、「農林漁業セーフティーネット資金」によりまして対応してまいります。さらに恒久的な対策と致しましては、市場競争力の高い品目・品種の改植・わい化栽培への転換等を助成致します果樹経営支援対策と強い園芸産地育成事業などを活用致しまして、収益性の高いリンゴ経営への転換を進めるとともに、生産コストの軽減対策と県産リンゴの需要拡大をすすめ、農家の生産意欲の高揚に努めてまいる所存でございます。
リンゴの価格保障制度につきましては、平成13年度から、6年間国の制度として果樹経営安定対策が実施されましたけれども、品質の劣る果実の出荷が増加致しまして、全体の市場価格の低下を招いたことから、平成18年度をもって廃止されました。この様な経過を踏まえますと、果実類については、今後新たな価格保障の制度の創設は困難であるというふうに考えております。
生産者からは価格保障を望む声があがっています。
国は平成18年度まで需給調整という前提つきでの価格補填・価格保障がありました。しかし、これが部長からも先ほどお話がありましたように、昨年度からなくなり、果樹経営支援対策事業に変えて、園地内の道の整備や土層改良など農業土木の補助事業が入ってきております。農業土木予算の拡大よりも、農業者を応援する価格保障、所得補償を農業予算の主役に据えることが必要と考えています。
私は長野市七二会、山の中に暮しています。地域の大先輩方が急傾斜の畑で、「土地を荒らしたくない、少しでも作りたい」と頑張っている姿には本当に頭が下がります。農政部長、価格保障は難しいかもしれません。しかし、日本の食料自給率4割は農業政策の転換の必要性を示しています。部長が、「長野県でつくる美味しい農産物を、もっと作ろう、もっと食べよう」と元気を出して取り組んでくださることを期待いたします。
次に、県財政と公共事業についてお尋ねします。
まず、浅川ダムの建設事業費は、本体工事、地すべり対策費など関連していくらと見積もっているのか、建設部長にお聞きします。
<北沢建設部長>
浅川ダム建設事業費に関するお尋ねでございます。今後予定しておりますが、浅川ダム建設事業費といたしましては、ダム本体工事、管理設備工事費、地すべり対策工事費などで、約180億円を見込んでおります。
景気悪化で今年度の当初予算を194億円も県税収入が不足するといわれています。国の法人税収にも同じことが起こっていると思われますが、それはどのくらいになるのか、地方交付税財源に国の税収不足がどのくらい影響があるのか、県財政にどのような影響があるのかについて、総務部長にお聞きします。
<浦野総務部長>
景気悪化の財政の影響についてのご質問でございます。ご指摘のように、本県の税収、当初予算に比べまして、194億円という大きな落ち込みを見込んでおります。
また、さらにこの厳しい状況が続いておりますので、さらに落ちるのではないかという危惧もいたしております。国、地方とも、同様な現況だろうと思っております。例えば、昨日の報道などによりますと、法人税収は10月末現在で35%の減と伝えられておりますので、特に交付税の原資でございます法人税収であります。そうしたものも大きく影響を受けてくると考えられております。ただ、地方交付税の原資でございますけれども、地方への配分と言いましょうか、きちんと申し上げれば、国の一般会計から地方交付税特会への繰り入れている部分でございますが、それについては、赤字国債を出して補てんするというような報道も伝えられておりますので、あんまり大きな影響を与えないことを期待をいたしております。
同様の傾向は、国、地方とも、来年度以降とも出てまいりますので、これまでも申し上げてきてまいりましたけれども、さらに厳しい状況が続くのではなかろうかと、こんなふうに考えております。
建設部長から明確に浅川ダムの関連事業で約180億円というお答がありました。浅川ダムに180億円、建設事業が始まれば数年間、毎年数十億という事業費の確保が必要になってまいります。県財政の厳しさが増すなかで浅川ダム建設へと進むことについては、信濃毎日新聞も9月県議会開会日翌日の社説では「ダム建設は財政的な視点から県会でも議論をすべき」と書いております。
近畿4府県知事は、淀川水系に国が計画したダムについては、財政的な負担から事業の中止を求めています。熊本の蒲島(かばしま)知事の川辺川ダムは要らないという議論の中にもこういう視点が盛り込まれております。
県税収入が減り、交付税も削減され、財政調整基金も減っているというなかで、公共事業だけ突出して拡大できないことは誰もがわかっていることです。そのときに、どんどん小さくなっていくパイをどう活かして使うかということではないでしょうか。私たち共産党県議団は一貫して、公共事業はより地元業者が受注できる生活密着型を優先するべきと言ってまいりました。老朽化している高校や特別支援学校など県有施設の改修・耐震補強や、生活道路や橋梁の維持補修などなど、身近な事業で地元業者の仕事につなげていくことで土木・建設関連の応援をするべきではないでしょうか。
いま、建設業界のみなさんは不況業種として、貸し渋りに会い大変なご苦労をされています。少しでも多くの業者に仕事を発注をする工夫をするべきではないかと思いますが、知事いかがですか。
<村井知事>
まず、地元企業が受注可能な公共事業を優先するべきというご議論でございます。
公共事業はそもそも、規模の大小にかかわらず、必要性・重要性・緊急性などを勘案して、選択して実施するものであります。これらの事業を実行段階として工事発注に入って、その際には必要な品質が確保され、所要の事業効果が得られること、入札契約の競争性・透明性が担保されること、こういうことが必須条件であります。
この範囲内で、地域を支える優良な建設企業が存続できるようにしていくことが、県民生活の安心・安全の確保や地域経済活性化の上で必要である、こういうふうに私は認識しております。平成19年度においても、全発注案件の99%を県内企業が、83%を地方事務所管内の地元の企業が受注をしております。今後も地元企業の受注機会の確保を図っていくことは当然だと思っております。
つぎに県財政の健全化について知事に伺います。知事がこの間、堅持をしてまいりました「県債の発行は元金償還の範囲内」ということは今こそ試されるのではないでしょうか。県税収入の落込みに加え、来年度以降も交付税の大幅な減額は避けられないということは先ほどの浦野総務部長の答弁でも明らかです。
国は地方交付税の不足分を地方自治体に肩代わりさせ、20年後には交付税措置するとして、当面は臨時財政対策債を発行して地方に財源確保をさせています。2001年度から県は臨時財政対策債を充てざるを得ず、8年間の累積で約2200億円にものぼっております。しかも、元利償還金の全額を基準財政需要額に算入される、というものでありすから、全額交付税として返ってくるものではありません。まさに交付税として取れる保証がない、裏書の無い手形と同じではないでしょうか。
知事はこれを借金と受けとめて対応してきたことで、1兆6500億円もあった県債残高もようやく1兆4000億円台へとこの間のがんばりの結果が出つつあります。せっかくの努力が無にならないことを願っているものです。
景気の悪いときに、景気浮揚、刺激策として経済対策と言い、「県債発行は元金償還の範囲」ということをもっと弾力的に考えろという議論がされていますが、県債発行を増やして公共事業を増やしたくらいでいま世界を覆っている景気悪化・不況を食い止められるものではありません。
知事がこの間、堅持してきた「県債の発行は元金償還の範囲内」、この姿勢を崩さず続けるべきと考えます。知事いかがお考えでしょうか。お聞きをいたします。
<村井知事>
二つ目に、県債発行につきまして、ご質問を頂戴いたしました。昨日、木下議員のご質問にもお答えしたところでありますが、県債残高を縮減し、将来の世代の負担を減らしていくという財政健全化のための基本スタンスを変えるつもりはありません。しかしながら、このために、今現在を生活している県民の安全・安心の確保やあるいは地域の活性化という県が本来果たさなければならない役割、これを損なうことはあってはならないと考えます。昨今の非常時的な状況におきましては、この取り扱いについて、ときに弾力的な対応も必要であると考えているところであります。
公共事業の発注については、より地元企業を優先して発注するというこういう姿勢で取り組まれてきたこと、引き続きお願いをしたいと思うものであります。地元の業者の皆さんは、本当に出来るだけ少しでも多くという願いをもっておりまして、入札制度の改革なども県議会としても検討する研究会も立ち上げて頑張っているわけではありますが、いずれにいたしましても、地元の業者の皆さんにより少ないパイの中でも行き渡るような工夫の発注の仕方を引き続きご検討を願いたいと思います。
そしていま、厳しい財政の悪化の中で、私たち日本共産党は、より外需頼みから内需拡大、家計応援へ軸足を移すことを提案しております。消費税の食料品非課税で家計を応援すること、安定した雇用を守ること、社会保障の拡充、農業・中小企業の応援、地域経済の再生などがそれにあたると思います。世界的不況で、イギリスをはじめEUは、消費税の引き下げを決めております。これは内需拡大の決め手になるから、こういう思い切った対策に打って出て、世界は変化をしているわけであります。
そして財源問題について言えば、軍事費などをはじめとして、いままでメスを入れてこなかった部分に、思い切ったメスを入れることと、この間大企業や大資産家への減税を行い続けてきて大変優遇されてきた、この二つの聖域にメスを入れれば、消費税に頼らなくても暮らしを支える財源を確保することができるという提案をさせていただいているところであります。
国は地方分権といいながら、自ら招いた財政破たんには反省をせず、「お金は出さずに、口は出す」、新たに地方自治体が自ら行政改革を行って計画しながら借金をしてよいという「行政改革推進債」で県政運営をしばっています。県有施設の民営化をはじめ、今出されております、県立病院5病院の独立行政法人化、県職員1500人削減などなど、そして、それに加えて県民へのみなさんの負担増などなど、本当に認めがたいことばかりであります。
こういう問題に対して、いま厳しい県の財政の中で、知事がこのかぎりある財源の中で、どうしても弾力的に県債を発行して、いろいろなことをうっていかなければならない、こういうことを言われましたけれども、今ここまで頑張りぬいて、県民にも負担を求めながら、行ってきた財政健全化の道筋を後戻りさせない、そういうことを本当に求められているのではないでしょうか。いずれにいたしましても、この県議会に提案されている多くの県民への負担増の条例改正案などなどについては、明日の石坂県議へバトンを渡して私の質問とさせていただきます。